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こいほげが技術以外のことを書くブログ

フォックスキャッチャーを観た

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/a/ae/Foxcatcher_First_Teaser_Poster.jpg/220px-Foxcatcher_First_Teaser_Poster.jpg

新ピカで2015-02-25 21:25 の回を観た。観客は20名ほど。

前情報はほとんど仕入れずに見たので、実話ベースであることも、デュポン社の大富豪の話であることも知らなかった。その分展開が衝撃的で、大変面白かった。

南北戦争の火薬製造で莫大な財を成した化学企業デュポンとそのデュポン財閥の相続人の一人であるジョン・デュポン。50歳前後のいい年にもかかわらず、精神は恐ろしく幼稚なままで、自らの薄っぺらな自己顕示欲を満足させるために、札束で他人を操り、駄々っ子のように癇癪を爆発させる。アメリカで大富豪の家に生まれるというのは、こういう最低限の精神成長も無いままに年令を重ねるということなのか。育て方を完全に間違えていると思ったが、調べたらジョンが2歳の時に両親は離婚していた。

こんな出来の悪い漫画のような状況が現実に起きていたのが、じわじわと薄ら寒くなる。大の大人が大勢雁首揃えている状況でも、権力者の暴走を止めることはできない。それが実社会というものか。

ジョンが自らのマッチョ思想の発露として「愛国」「強いアメリカ」を主張するのは、実は幼稚な承認欲求に過ぎないことが観客には的確に伝わる。愛国心は悪党の最後の避難所であるとともに、幼稚な人格が自己肯定する装置として機能していることが分かる。

ラストシーンに出てくるあのオクタゴンはまさにUFC。実際のマーク・シュルツも1996年5月のUFC 9に出場して勝利していた。そしてラストカットのマーク・シュルツにかかる「USA! USA!」という声援。ジョン・デュポンが自分の虚栄心を満たすための「強いアメリカ」に重なるのが見事だった。